UoPeopleでMATH 1201 College Algebra を履修しました。この記事では、数学のことほぼ何も知らなかった自分がどのように勉強していたかの記録と、コースを終えての感想を書きます。数学に対して苦手意識がある方へのヒントになれば幸いです。
今Term中は、日本人コミュニティの皆さんと数学勉強会で交流させていただけたことが心強く励みになりました。一人だったらdropボタンを押していたと思います…。しらたき先生、一緒に勉強してくださった皆さんどうもありがとうございました。そしておつかれさまでした。
一緒に勉強していただいたお二人のブログがとても素敵なのでぜひ。
※同時に取っていた CS 1102 Programming 1 の感想も最後に一言だけ書きました*1
コースの内容
シラバスはこちら。
- 関数、関係、写像
- 一次関数、二次関数
- べき関数、多項式関数、分数関数
- 合成関数、逆関数
- 指数関数、対数関数
- 連立一次方程式、非線形連立方程式
- 三角法、三角関数
- 極座標と直交座標
- 複素数平面
高校数学Ⅰ〜Ⅲの範囲が多かったようです(私は一次関数と二次関数しか知らなかった…)
テキストはオープンリソースの『Algebra and trigonometry』を使用します。
日本の高校数学の参考書と比べると、グラフを得るための手法や、グラフの特徴と分析にページ数を割いてある印象です。またどの関数もあわせて逆関数が取り上げられているのが特徴的でした。
その他、日本の参考書に載っていなかった(見つけられなかった)コンセプトとしては、有理根定理、デカルトの符号法則、連立方程式の行列を用いた解法、ガウスの消去法、自然対数、指数関数的成長・減衰のモデル化、放射性崩壊・半減期の計算なども出てきました。
課題は3種類あり、定理の証明やグラフの分析などを行う課題、問題演習を行う課題、実世界にある関数を探したり振り返りレポートを書く課題を提出します。この他に2回のGraded QuizとFinal Examがあります。
勉強方法
Try IT の動画をひたすら観た
私は高校時代に勉強を放棄しており前提知識が欠けていたため、そもそも因数分解や指数法則などの基礎を知らず、一週目からテキストの本題に辿り着けませんでした。そこでまず、わかりやすくて無料ですごいと評判の Try IT の高校数学の動画を観ることから始めました。
動画を観終えるとテキストは斜め読みできるようになり、強調箇所の定理などの確認、英語表現の確認だけに留められるようになりました。
動画は2倍速で120本ほど(観るしかなくて)観たのですが、一本の動画の構成が 要点の説明→例題→練習問題→要点の説明 と決まっているので、集中して聴くべきところと聴き流せるところが予測できて、早送りしながら時短できるのが良かったです。
動画を観るときはiPadのSplit ViewでGoodNotesを開き、先生が黒板に書く導出をスクショして貼ったり問題を一緒に解いたりしていました。
頭の中に引き出しがないので、解法を知りたい時にノートからすぐに引き出せるように扉ページの色を変えたり、Outlineにキーワードを入力してテキスト検索できるように工夫しました。
エクササイズをたくさん解いた
成績に直結するGraded QuizとFinal Examの対策としては、テキストに載っているエクササイズを解いて練習しました。しかし奇数番号の解答しか載っておらず解法もわからないので、Wolfram Alpha に課金して途中式を見て解き方を理解していました。
毎週限られた時間の中で新たな知識をインプットし続ける必要があり、どうしても公式の丸暗記になりがちでしたが、エクササイズを解く段階になってやっと、暗記した公式がなぜそうなるのかを理解できていたように思います。
解き進めていると「あれとあれを組み合わせて解けそう」「展開できたらあの公式が使えそう」のように考えられるようになり、その頃から「数学、もしかして楽しいのでは...…?」と思えるようになっていきました。積み上げた知識を適切なタイミングで使って問題が解けたときの気持ちよさが好きです。
かんたんな本を読んだ
コースが始まる前にはこちらを読みました。
読んだ。中学の一次関数、二次関数、図形まで完全に理解した(してない)。つぎ、高校数学を完全に理解していくぞ🔥あと4日あるから大丈夫(フラグ)
— okayu (@okauuu_) 2021年9月5日
『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』 西成 活裕/著 - かんき出版 https://t.co/uWdiq2rQLe via @kankipub
続編の『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく高校の数学を教えてください!』もどちらも5時間くらいでさくっと読めます。
この本には数学のロードマップや向き合い方が載っており、数学の全体像と心構えを知れました。数学には代数(数と式)・解析(関数とグラフ)・幾何(図解)があって、解析と幾何のラスボスが微積分とベクトル、というのはこの本を読むまで知らなかったことです。全体と自分の立ち位置が見えたら不安が少し減りました。
それからコース中は、『数学ガール』がストレスにならずに読めて、しかも知識の補充になるので助かりました。とくに7,8週の三角関数の単元は公式がたくさん出てきて、記憶を優先し理解が後回しになっていたので、『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』を読んで理解の不足を補っていました。
使ったツール
数学をやるまでは知らなかった新しいツールにも出会いました。
TeX記法で数式を書く際は、在学生の方から教えていただいた Mathpix Snip を使っていました。予めWordやGoogle docsのGUIで数式を作ってから、それをスクショしてこのツールに貼りTeXに変換していました。
グラフを描く際にはこの二つのツールを使いました。
余談ですがCHARTMANさんのTwitterが好きでよく見ています。Desmosを使ってこんなふうにグラフで遊べるようになりたいものです。
単純な関数による水滴の表現法
— CHARTMAN (@CHARTMANq) 2021年9月26日
もしかしてこれは新しい手法? pic.twitter.com/1J8ILo4nFP
プログラミングと数学
Unit 1 のトピックが「関数、関係、写像、定義域、区間」から始まるのですが、私はここでいきなり意味がわからずつまずきました。その際に見つけたこちらの記事は、JavaScriptを用いて解説してありわかりやすかったです。
Algebraのdomain,range,relationの章がいまいち理解できてなかったんだけど、プログラミング言語に変換すると 写像=map, 集合=array, 部分集合=.slice() ということだった!とてもわかりやすい
— okayu (@okauuu_) 2021年9月24日
プログラミングで学ぶ写像 前編 - 集合の復習、写像の定義、像と逆像 https://t.co/OoPHCBc1LO
他には、Union(和集合), Intersection(共通部分)はよく考えたらSQLで使ってるよなと気づけたりも。それからLogarithmを勉強中に、ちょうど47歳さんのソートの計算量の話が盛り上がっていて、なるほどこうやって数学とアルゴリズムが結びつくのかとひそかに感心していました(計算量が何なのかはまだわかりません)
コースを終えて
これまでのUoPeople生活は成績にそんなにこだわらずやってきましたが、今回ばかりは数学の苦手意識を克服したくて、A(GPA4.0)を取って自信をつけるぞと決めていたので、納得できるまで時間をかけて勉強しました。結果はFinal Examが100点で、成績はAを収められたので本当にうれしいです。
コース開始前は四則演算くらいしか知らないレベルで、MATH系のコースに強い恐怖心がありましたが、今となってはこの先にある微積分や離散数学のコースも楽しみに思えています。また、次のTermは Introduction to Statistics(統計学入門) を取る予定なので、今回学んだコンセプトがどのように統計学に適用されるのか興味を持てています。そんなふうに思えるようになったことが成長だと自己評価しています。
一方で今期は睡眠不足で体調を崩してしまったり、仕事との両立がつらくなったり、内容も難しかったりで、精神的にも体力的にもしんどいTermでした。でも逆にこんなしんどい勉強法は独学では絶対にやらないので、大学のカリキュラムで締め切りを課されて学べたのが丁度よかったように思います。がんばった分だけ達成感を得られたし自信がつきました。
この記事を書き始めた当初は、なぜ数学ができるようになって自信をつけたかったかを掘り下げていたんですが、取り留めのない話になりそうだったので止めました。そのあたりの思考もいずれ別の記事に整理してみたい気持ちがあります。
まとめ
数学たのしい、もっとやってみたい。
引き続きがんばります。
*1:Programming 1 (Java) を早口で振り返ると、オブジェクト指向という壮大なテーマの中でも基本的な概念だけを扱い、設計思想やリーダブルコード的なことを体系的に学べる内容でした。Swingを使った簡単なGUIの実装を通じて、実装そのものというよりはプログラミングに共通する抽象的な概念(ポリモーフィズム、クラス継承、インターフェース、型、非同期処理など)の理解を深めるのが主題となっています。私はこういうのを頭では理解しているんですが、言葉で説明しようとするともごもごしてしまうエンジニアなので、語彙力と言語化力が鍛えられ弱点を強化されました。こちらもよいコースでした。